モジュール方式の概要

 産業界において、モジュールはごく一般的な語として普及しています。それは、規格化され独立性の高い部品群を指し、それらを組み合わせて高品質で多様な製品を作るモジュール生産は、多くの製品の世界的な分業体制確立のきっかけになり、産業界の発展に大きく貢献しています。教育にモジュールが登場し、大きな意味を持ち始めたのは、学校が示すカリキュラムに従って教育を受けるという従来の方式を改め、生徒が自主的にカリキュラムを編成し、自己目標を達成していくという方式への転換という米国における高等学校教育の改革 でありました。生徒一人ひとりがモジュールを選び、1週間の時間割を決めていくのです。これによって、自主性と意欲を引き出し、教育の最大限の効果を引き出そうというものでした。この考え方は、カリキュラムの人間化とも呼ばれています。
 主体的な学びを基盤とした教養教育を実現するために、この考え方を生かせないかと考えたのが、本学におけるモジュール方式採用のきっかけでした。ただし、モジュールを構成するためには、それぞれのモジュールが教養教育の目標に叶うものでなければならず、また、アクティブラーニングで展開可能でなければなりません。さらに、学生たちの興味関心を引くものでなければなりません。これらを満たすための苦吟はありましたが、まず、モジュールを全学モジュールと学部モジュールに分けることにしました。前者は、学士課程教育の 基盤を構成するものとして、どの学生であっても履修しなければならないモジュールとし、教養教育の時間帯での履修を義務付けました。一方、後者は、各学部での専門教育の基盤を構成するものとして学部の特色を出せる形にしました。
 ここでは、全学モジュールに焦点をあてて述べることにします。この全学モジュールにおいては、特に学生たちの興味・関心を惹きつけるものでなければならないと考え、学生たちの身近な社会が抱える課題をテーマとしてモジュールを組むことで解決を図りました。また、従来のリベラルアーツ教育の長所(人文科学、社会科学、自然科学の見方や考え方をバランス良く身に付ける)も取り入れたいとも考え、それぞれの科学の切り口からテーマに迫る授業群の構成に知恵を絞りました。
 この結果、ここに示す全学モジュールが構成されました。ここに示すように、それぞれのモジュールのテーマは、現代社会の課題や人生に不可欠な課題となっています。この中から、学生たちは1年半かけて学ぶモジュールを選ぶことになります。モジュールⅠ科目は、全員必修であり、モジュールⅡは、5~6科目の中から3科目を選び、履修します。もう一つの工夫は、専門教育で学ぶ分野のテーマは選択できないことにしたことです。つまり、学生 たちの学びを幅広くしようと考えたのです。人間の基盤を作る教養教育時代には、幅広い視野の獲得を図って欲しいとの気持ちを伝えました。さらなる工夫は、モジュールの開始を後期にしたことです。それは、入学して時間が経って大学にも慣れ、自分を改めて見つめる時期にモジュールの選択をし、確固たる目標を持ってモジュールに臨んでもらおうと考えたからです。


入学前教育について

 さらに、このモジュール方式が円滑に展開できるように、アクティブラーニング用の教室も6つ用意しました。ここでは、様々な授業形態が可能になるように、一人がけの机とし、黒板(ホワイトボード)も教室の四方に設置し、数台のプロジェクターも稼働できるようにしました。担当教員には、教材開発費を配分し、モジュールの定着に向けたシフトができつつあります。


教室写真1
教室写真2
教室写真3

 このモジュール方式の長所は、次の点であり、これらが、円滑に機能すれば、自ずから教養教育改革の目標を達成できると考えています。

  1. 興味・関心の高いモジュールを選ぶことによって、主体的な履修ができる。
  2. どのモジュールを履修しても現代社会の課題等の追究が可能であり、探究力が育まれる。
  3. アクティブラーニングによって、未来社会で求められる諸能力や態度の形成が可能となる。
  4. 学生と教員及び学生と学生の学習コミュニティーが形成され、主体的な学びの基盤が形成される。
    (約10名の教員が最大100名の学生を1年半支援することになり、従来と比べものにならないほど緊密な学習空間が形成される)

 もちろん、課題も多く抱えています。しかし、実践を積み重ねる中できっと解決策が見つかるものと確信しています。また、少し長い目で新しい教養教育を見つめることによって、更なる将来像も浮かんでくるものと考えます。